さて、ここまではVVVF制御のお話として、
まずVVVFの基礎的な項目である「VVVF制御方式の基礎」
そのVVVFの中でキモとして働く半導体素子「GTOとIGBT」について書いてきました。
そして今回は、その半導体素子を動かす「パルス」というもについて書いていきます。
GTOやIGBTがVVVFの中でも「ハードウェア」的なものであるならば、
今回のパルスは「ソフトウェア」的なものになります。
なかなか難しいものかもしれませんが、
「なんとなくこんなもん」的な感じで見ていただければ幸いです。
それでは、VVVFのキモ パルス(PWM)制御です。
VVVF制御は、インバータのスイッチングによって直流電流を三相交流に変換し、
電車を動かしていることは以前説明しました。
その時のVVVF制御の基礎などで説明した時は、三相交流を
こーんな感じの、きれいなサインカーブを描く図で表していました。
もちろん、こんなキレイな電流を入力出来れば文句はないのですが、
実際のところはいろいろ難しい問題もあり、そうは出来ないのです。
実際の電車などで出力される電流は、この上の図のようにキレイなものではなく、
こーんな感じの、直流電流を細かく切り刻んでパルス状にした電流を送り込んで、
その平均電圧で模擬的にサインカーブに近い電流を作っています。
これって、何かに似ていません?
以前お話した、電機子チョッパと同じようなやり方なのです。
ただし、電機子チョッパ制御はパルス状に細かく切り刻んだ直流電圧を、
常に一方向のみの直流として出していましたが、
VVVF制御の場合はそのパルスをプラス方向・マイナス方向の両方向に出力して、
交流の電流を作り出しています。
この「パルス」をいかに制御するかというのがVVVF制御の中で重要な部分であり、
いかに理想的なサインカーブに近い電流を作り出すか、日夜努力が続けられています。
さて、そのパルスの制御方法ですが、
現在主流となっているパルス制御方式は「PWM制御」と呼ばれるものです。
このPWM制御というのは「Pulse Width Modulation」の頭文字をとったもので、
日本語に訳すと「パルス幅変調」という意味になります。
これは、直流電圧そのものの大きさは変えず、
パルス状の直流電圧を出力する時間(幅)を変えて、全体の電圧を制御します。
先ほど書いたように、基本的な考え方はチョッパ制御とあまり変わりません。
では、チョッパ制御のどのへんが違うのか。
それは、下の図をご覧ください。
この図の水色の棒グラフが「パルス」で、実際に流れる電流です。
それに対して、赤い線で描かれているサインカーブが、目標とする交流電流です。
赤い線で描かれているサインカーブに近い電流を出力するために、
最初は直流の電流を非常に小さく(出力時間を短く)し、次第に幅を大きく(出力時間を長く)していきます。
素子がスイッチングによって出力されている時間(t1)を
0から次第に大きくして最大値に達すると、今度は次第に小さくしていきます。
この時に出来たパルスの平均値が、サインカーブと同じものになります。
つまり、細かく刻んだ電流によって、擬似的にサインカーブを作り出しています。
なお、最終的に0まで戻った電流の幅は、今度は逆方向へ流れるようにインバーター回路を組み替え
再び出力を始めます。
またあとで説明しますが、この「t1」の出力幅を変える事でサインカーブの電圧が変わり、
「t2」の周期を変化させることで周波数を変える事が出来ます。
これが、PWMの基本的な考え方です。
ちなみに蛇足ですが、
PWM制御以外のパルス制御方式としては、
家電製品によく使われているPAM制御方式(Pulse Amplitude Modulation パルス振幅変調)や
PPM制御方式(Pulse Phase Modulation パルス位相変調)というのもあります。
これらがどういうものかは、割愛します。(というよりも後藤が理解してない)
では、具体的にどういうパルスにすれば、電圧や周波数を変えられるのでしょうか。
一応、下の画像と文章は「イメージ」ですので、実際はもっと複雑です。
この図で、赤線のサインカーブを出力するために、水色のパルスを出力していると仮定します。
(実際に出力されている電流は水色の棒で、それを平均すると赤線の電流になると仮定)
このサインカーブを、もう少し低い電圧(サインカーブの高さを低く)にしたい。
その時には、パルスはどういう出力をさせたらよいでしょうか。
PWM制御は、パルスの電圧はそのままなので、
パルスの出力幅(出力する時間 t1)だけを変えることによって、平均する電圧を変えます。
つまり、出力時間(t1)を短くすれば電圧は下がりますし、長くすれば電圧は上がります。
では、周波数を変えるにはどうすれば良いでしょう。
今度は、スイッチングを切り替える速度(t2)を変えます。
短くすれば周波数は高くなりますし、長くすれば周波数は低くなります。
これによって、周波数を制御することが出来るのです。
これが、PWM制御の大まかな説明です。
先に書いた通り、実際にはもっと複雑で「搬送波がうんたらかんたら」とかあるのですが、
説明している方がワケわかんなくなるので、ここでは割愛します。
実際、この文章も相当端折ってますんで。
さて、PWMの応用として、もうひとつ説明をしておきましょう。
それは「2レベルインバータ」と「3レベルインバータ」です。
今まで説明してきたPWM制御は、パルスの出力電圧が「あるか」「ないか」でした。
簡単に言えば、インバータへ入力する電圧が1000Vであったら、
0Vか1000Vのふたつでパルスを出力し、インバータを駆動していました。
これを「2レベルインバータ」と言います。
0か1000しかなかった
ところが、最近ではインバータへ入力される電圧を途中で分圧し、
その直流電圧の半分の電圧も使い、3種類の電圧でPWM制御を行う
「3レベルインバータ」というものが普及してきました。
これは、例えばインバータへ入力する直流電圧が1000Vであった場合、
0V、500V、1000Vの3種類でパルスを出力するものです。
2レベルインバータは基本的にパルスが「棒状」のものでしたが、
3レベルインバータはパルスに「段」が付いているのが特徴となっています。
こうすることによって、より本物のサインカーブに近いパルスを作り出せるほか、
VVVFインバータ特有の特徴的な変調音を低減させるメリットもあります。
ただし、インバータ回路が複雑になるほか、PWM制御も複雑になるために、
製造時のコストがアップする点もあります。
理論的には4レベル・5レベルも可能だと思いますが、
費用対効果を考えるとあんまり意味はないんじゃないかなと思っています。
長々とやってまいりましたが、
あくまでも参考程度に「こんなもん」と思っていただければ幸いです。