国鉄末期に実用化され、90年代に急速に普及し、
JR・民鉄を問わず、現在の新製車両のほとんどが採用する制御方式。
いわば、現代の電車制御の主流。
そして、省エネ・メンテナンスフリー車両の完成形。
それがVVVF制御と言えるでしょう。
VVVF制御は半導体を使った制御方式と言うだけでなく、
カーボンブラシなどの消耗部が非常に少ない、
交流誘導電動機というモーターを使える制御方式として、
非常にすばらしいものなのです。
今回のこの項では、
VVVF制御の基礎的なものを書いていきます。
もっと詳しい部分・細かい項目に関しては、
また別の項で書いていきます。
さて、VVVF制御の「VVVF」とは、何の意味があるのでしょうか?
これは「Variable Voltage Variable Frequency」(バリアブル ボルテージ バリアブル フリークエンシー)の略で、
日本語に直すと「可変電圧可変周波数」となります。
簡単に言えば、前の項で説明した「インバータ」によって、
電圧と周波数を自由に制御し、
それによって電車のスピードを制御しよう。
そういった制御方式なのです。
従来の制御方式では、もっぱら「電圧」を制御していましたが、
VVVF制御では「電圧」のほかに「周波数」を制御しています。
VVVF制御は大抵の場合「三相交流誘導電動機」というモーターとセットで使われます。
一部に違うモーターを使ったものも存在しますが、
電車では三相交流誘導電動機を使うものが主流です。
また別の項で説明しますが、このモーターは周波数を制御することによって動かされます。
この「周波数」を制御するのがVVVF制御の「キモ」であるのです。
では、このVVVF制御はいったいどのような制御方式なのかを見てみましょう。
まず、VVVF制御は先ほど書いたように、
大抵の場合は「三相誘導電動機」というモーターとセットで使われます。
このモーターは、通常の交流電動機と違い、
3つの線でひとつの交流回路を構成する「三相交流」というもので動きます。
三相交流についてはこちらの項で簡単に説明をしてあります。
さて、VVVF制御装置の回路を簡単に表すと、
以下のようなものになります。
以前説明したインバータ回路に、もうひとつスイッチのペアを増やした感じですね。
実際の回路では、このスイッチの部分がGTOサイリスタやIGBTなどの半導体素子になっています。
では、早速この回路を動かして三相交流を生み出してみましょう。
この回路図は、左側のスイッチでU相、真ん中でV相、右側でW相を作ることとしています。
三相交流の項でも説明しましたが、こんな電流をこの回路で作るわけです。
この図に基づいて順に回路を動かします。
まずは、上のサインカーブ図のAの部分、U相から電流を送り込み、V相とW相によって戻しましょう。
この回路図の1・5・6のスイッチを入れてやります。
すると、電流はU相の1のスイッチを通ってモーターへ流れます。
モーターへ流れた電流はそれぞれ、V相とW相の電線を戻ってきて、5と6のスイッチで元へ戻ります。
プラスの電流はU相から流れ、マイナスの電流はV相とW相で半分ずつになって戻ってきていますね。
では、次のBの部分に行きましょう。
Bでは、U相とV相から電流を送り込み、W相によって戻しています。
1と6のスイッチは入れたままで、5のスイッチを切って2のスイッチを入れてやります。
すると、プラスの電流は1のU相、2のV相の二手に分かれてモーターへと流れていきます。
そして、マイナス電流は6のW相によって戻っていきます。
以降、サインカーブの図のように電流が流れるように、
以下のようにそれぞれのスイッチを動かします。
これが、VVVF制御によって三相交流を生み出す、基本的なしくみです。
なお、実際は単純な電気の入り切りになるため、
図のようなきれいなサインカーブは描きません。
あくまで「イメージ」として捉えておいて下さい。
実際の電車で制御をする場合は、
最初はモーターが大きなトルクを発生できるようゆっくり回すために、
電圧と周波数を設定して動かします。
電車が動き出すと、次第にその電圧と周波数を高めて行き、
モーターを早く回転させます。
この回路を速く動かせば動かすほど、
周波数は高くなっていきます。
実際の回路では、無接点制御装置(いわゆるコンピュータ)によって、
運転士のマスコンによるノッチ指令や、現在走っている速度などを見ながら、
この回路を動かしています。
ちなみに、
ブレーキ時に回生ブレーキとして働かせている時、
モーターが発電した三相交流をインバータによって直流に戻しています。
要するに、
インバータがコンバータとして働いているのです。
現在はVVVF制御が一番先進的かつ実用的な制御方式として使われています。
これよりもさらに良い制御方式というのは聞いたことがありませんが、
将来的にはさらに新しい制御方式が開発されるのでしょう。
しかし、抵抗制御方式が長期にわたって電車の制御方の主流として活躍していたのと同じように、
VVVF制御も長期にわたって電車の制御方式の主流として君臨するのではないかな、と思います。