さて、数ある「チョッパ制御」の中でも一番多く採用された方式。
それが「電機子チョッパ制御」です。
前の項で書いたように、
一般的に「チョッパ制御」というとこの「電機子チョッパ制御」のことを言います。
電機子チョッパ制御の基本的な回路図ですが、割と簡単な回路です。
まずこの回路図を使って説明する前に、
チョッパ制御の基本的な原理を説明します。
その回路図なんですが…。
この超簡単な回路図が、チョッパ制御の基本的な原理です。
サイリスタは高速で電気を入り切りするスイッチと同じものです。
この回路図ではサイリスタをスイッチに置き換えました。
このスイッチを入れるとモーターが回り、切るとモーターが止まります。
ちょー簡単な回路です。
舐めてんのかと言われるかもしれませんが、これがチョッパの基本なのです。
チョッパ制御は、スイッチを入れてモーターが回転し、
スイッチを切ってモーターが止まるまでの間に再びスイッチを入れる。
そういう制御方式です。
スイッチを入れるとモーターが回りだし、スイッチを切るとモーターは止まろうとしますね?
しかし、止まる前に再びスイッチを入れればモーターは回転を始めます。
スイッチをゆっくりと入り切りすれば、モーターは緩やかに回りますが、
だんだんスイッチを速く入り切りすれば、モーターは高速で回転を始めます。
では、この時に電気はどのように流れているでしょうか。グラフにしてみます。
このグラフで、赤い部分に電気が流れています。
「チョッパ」の意味どおり、電気を叩き切っています。
この電気は非常に短い間だけ流れています。
このような、超短時間だけ流れるような電流を「パルス」なんて言います。
実際の電車であれば、
架線に流れている最大電圧(要するに1500V)と0Vでのみ制御をしています。
チョッパ制御では、基本的に電圧(Ea)は一定のままです。
この一部分だけ切り取った電気(赤い部分)の平均電圧が青い線(Eb)の部分とします。
平均電圧(Eb)を上げようとすると、電気の流れる時間(T−on)を多くしてやります。
電圧(Ea)は常に一定のままなので、T−onを大きくすることで、
平均電圧(Eb)を上げることが出来ます。
簡単に言えば、サイリスタという高速で入り切りの出来るスイッチを使って、
電気を必要な分だけ切り取り、その平均電圧で制御する。
それがチョッパ制御の基本的な考え方です。
図形の計算方式で考えると、ある一定の時間aTの平均電圧を計算しようとしたら、
Ea×T−on×aTのパルス数 で平均電圧が出ますね?
平均電圧を高くするためにはどうするか?
Eaは一定なので、T−onを大きくするか、aTのパルスの数を増やします。
こうすれば、平均電圧は高くなります。
さて、このままの回路だと、スイッチを入り切りするたびに電気が切れたり流れたりで、
電圧の変動が激しくなります。
これを「脈流」なんて言いますが、これが大きいとあまりよろしくありません。
ということで、さっきの超簡単な回路にふたつ部品をくっつけます。
さっきの回路に、モーターと直列に主平滑リアクトルを、
並列にフリーホイルダイオードを挿入します。
主平滑リアクトルとは、コイルのようなもので、
電気を一時的に蓄えて位相をずらし、脈流を小さくする効果があります。
フリーホイルダイオードは、一方向のみに電気を流す、要するにダイオードです。
これについての効力は今から説明します。
さて、早速スイッチを入れて電気を流してみましょう。
電気は、単純にこのように流れます。
モーターは回転し主平滑リアクトル内を通って元へと帰ります。
では、スイッチを切りとするとどうなるでしょう。
今度は、主平滑リアクトルからフリーホイルダイオードを通ってモーターへと電気が流れます。
主平滑リアクトルが若干の電気を持っているので、スイッチを切りとした状態でも電気は流れるのです。
しかし、その電気も限りがありますが。
この状態で、電気はどのように流れるのかグラフにしてみます。
赤い部分がスイッチを入りにしている状態で、
薄いピンクの部分がスイッチを切りにしている状態です。
主平滑リアクトルがあることにより、スイッチを入れると電圧は緩やかに上昇します。
スイッチを切ると、主平滑リアクトルのおかげで、電圧は緩やかに降下します。
これを繰り返すことにより、脈流を減少させた電流をモーターへと送り込むことが出来ます。
スイッチの入り切りの時間を制御することで、平均電圧を制御し、
速度を制御します。
これが、チョッパ回路の基本的な理論です。
では、最初の図に戻って説明します。・
まぁ、大して変わらんわけで、電気は図のように流れます。
サイリスタが入りの時は、パンタグラフから取り入れられた電気がそのままモーターへと流れ、
主平滑リアクトルを通って大地へと流れます。
サイリスタが切りになった時、主平滑リアクトルからフリーホイルダイオードへと電気が流れ、
モーターへと流れて主平滑リアクトルへ還流します。
この時の電流は徐々に減衰していきます。
ちなみに、主平滑リアクトルがなかったら、還流する電流はあっという間になくなるそうです。
高速で電気を入り切りする事が出来るサイリスタを使うことで、
このチョッパ制御を実用化することが出来ました。
これが、チョッパ制御での力行回路の基本です。