すぺしゃる・さんくす:某社A係長
いきなりですが、
工作のお時間です。
材料があれば、是非とも遊んでみるとおもしろいと思いますので、
時間と材料さえ許す方は遊んでみてください。
てことで、材料です。
一円玉(10枚程度) アルミホイル 磁石(なるべく強力なやつ) 両面テープもしくはセロテープ
これらの材料を、以下のように適当に作ります。
要は、一円玉を適当にアルミホイルの上に並べて、それをアルミホイルで包みます。
本当は円形に並べた方がいいんですが、後藤はテキトーなので四角にしました。
アルミホイルだけだとうまく行かないので、中に一円玉を仕込んだ方がよいです。
アルミの板を切り出す技術を持ってる人は、アルミ板を円形に切り出してもOK!
出来上がったら、こんな風に
適当なお皿に水を張って、その上にぷかぷかと浮かべます。
さて、この「水に浮かべたアルミの物体」の上で、磁石を回します。
すると、どうなると思いますか?
アルミは磁石に引っ付きませんから、なんにも起きない?
では、結果は動画でどうぞ。
・あららあららとアラゴの円盤(WMV640*480 2,342KB 22sec)
#ヒマと回線容量があって心の広い方は、後藤がピーチクパーチク言いながらやってるバージョンもありますので、よろしければどうじょ。
・後藤が駄解説するアラゴの円盤(WMV640*480 16,499KB 2min35sec)
磁石に反応しないはずのアルミの板が
磁石に反応してクルクルと回るのがご理解いただけましたか?
この現象を「アラゴの円盤」といいます。
「ウソくせー。なんか裏があるんだろー」とかいう人は
実際にやっていただければご理解いただけるかと思います。
さて、これがなんなのか?
この不思議な円盤こそが、VVVF制御でほぼセットとして使われる「交流誘導電動機」や
新幹線などで使われている「渦電流ブレーキ(ECB)」の
基本的な原理なのです。
では、どうしてこのような現象が起こるのか。
説明をしていきたいと思います。
アラゴの円盤をカンタンな絵にすると
下のようなヘナチョコ絵になります。
これで、磁石を右の方向へ動かすと、
円盤も連れて一緒に右方向(反時計回り)へ回転を始めます。
ここまでは、実験の動画の通りですのでよろしいですね?
では、なぜこのような現象が起こるのか。
この現象も、以前説明した「フレミングの法則」を使って説明が出来ます。
なお、「フレミングの法則」の「右手」「左手」の両方を使いますので、
混乱しないようにお願いいたします。
また、今一度それらの復習をした上で、この先をご覧ください。
簡単に言うと、「右手の法則」は発電の法則。
「左手の法則」はモーターの法則です。
さて、いきなりですが、理解の関門。
磁石を右の方向へ動かしましたが、
これを磁石の視点で見ると、円盤が左へ動いた事と同じ意味になります。
まず、この点を理解してください。
磁石を右へ動かすと、相対的に円盤が左へ動いたのと同じ意味になる
視線を「磁石」に置いて考えてください。
磁石と一緒に自分の視線も右へ動かすと、
見た目で円盤が左へ動いたように見えますよね?
ご理解いただけますか?
その上で、ここに「フレミング右手の法則」を導入します。
まず、磁石のN極が上にあるので、磁束は下の方向へ向いています。
次に、力の向きを考えます。
先ほど説明したとおり、磁石を右向きに動かしたので、
円盤を左へ動かしたのと同じ意味になります。
ということで、力の向きは左方向になります。
さて、この状態で起電流の向きを見てみると、
ちょうど手前側に起電流が流れる事になります。
ここで発生する電流がアラゴの円盤のなかで、一番のポイントとなります。
円盤の中で発生した電流は「渦(うず)電流」と言います。
この渦電流は発生した地点の付近をぐるぐると回っています。
ちなみに、力の向きを反対にすると、発生する起電力の向きも反対になるので
渦電流の回転も逆になります。
この「渦電流」は円盤の中の抵抗で消費されますが、
「渦電流」が発生する事にアラゴの円盤の大きなポイントがあるのです。
さて、もう一度改めて状況を考えて見ましょう。
磁束(磁力)が発生している。
電流が発生している。
ということは、ここに「フレミング左手の法則」を導入すると、
新たな方向に力が発生しますね?
円盤に先に左向きの力が発生していることになっていますが、
実際は円盤は動いておらず、磁石を動かした事による「見た目」の力の向きなので、
円盤に新しく発生した力が掛かります。
さて、では新たに左手の法則で考えてみましょう。
磁束の向きは下向き
発生している電流(渦電流)は手前向きに流れています。
ここで力の向きを見ると、
右向きに力が発生します。
ということは、
いちばん最初に磁石を動かした方向と同じ向きに
円盤に対して力が発生すると言うことになりますね。
実験と同じ結果になりました。
磁石に反応しないはずのアルミ板が
なぜ磁石と同じように引っ付いて動くのかを
これでご理解いただけましたでしょうか?
実験の動画では左向き(時計回り)に動かしていましたが、
考え方は基本的に一緒で、
力の方向や渦電流の発生方向が逆になるだけです。
アラゴの円盤は磁力で支配を受けるので、
磁石の力が強ければ強いほど、動き出す速度も速くなります。
磁石の力が強いと、渦電流も大きくなりますので(ある程度の限界はありますが)。
さて、ここでもうひとつポイントがあります。
磁石を動かすスピードが速ければ速いほど、
円盤の回転速度も速くなります。
しかし、いくら円盤が速く回るようになっても
決して磁石を動かす速度に追い付くことはありません。
なぜでしょうか?
これは、磁石と円盤の間に「スピード差(相対速度)」があることによって
渦電流が発生し、
それによって力を発生させています。
つまり、スピード差がなくなってしまった場合
渦電流が消滅し、力も消えてしまいます。
よって、磁石と円盤の間には、常に一定以上の「スピード差(遅れ)」があります。
この「スピード差(遅れ)」のことを「すべり」といいます。
逆に言えば、磁石の回転速度が遅くなって、一時的に円盤の回転速度の方が速くなっても、
すぐに速度が低下して(これは渦電流ブレーキとも関係がありますが、説明はまた別の項目で)
円盤の回転速度は磁石の速度以下になってしまいます。
先にも書きましたが、
アラゴの円盤は「渦電流ブレーキ」にも使われています。
それの原理はこれとほぼ一緒なのですが、説明すると渦電流ブレーキの説明と同じになるので
それはまた別の項目で説明します。
では、次はこの「アラゴの円盤」が実際の電車のモーターで
どんな風に使われているのかを説明しましょう。