これも直並列組み合わせと同じで、
抵抗制御方式と多いに関係があるのですが、
この制御方式のみを使って電車を動かす事は、基本的にありません。
抵抗制御方式の組み合わせの一種だと思ってください。
ちなみにこの制御方式、
モーターの「逆起電力」を理解していないと少々難しいかもしれません。
ということで、あらかじめ「逆起電力って何?」を読んでおいてください。
では、電車を動かしましょう。
抵抗を短絡させて電車を加速させ、
直列と並列を切り替えてさらに加速させます。
さて、電車を加速させるために、モーターの回転数が上がると、
逆起電力が発生して、いくらモーターの駆動電流を高めても、
回転数が上がらなくなります。
回転数を上げるためには、逆起電力を減少させてやればいいのです。
では、どうやって逆起電力を減少させましょう。
答えは、磁界を発生させている界磁の力を弱めるのです。
「界磁の力が弱くなったら、逆に回転数が落ちるんじゃない?」
と思う方も居られるでしょう。
実はそうならないのです。
電車に使われているモーターは、界磁(固定子)と電機子(回転子)が直列に接続された、
直流直巻電動機が一般的に使われています。(複巻電動機を使った話はまた後日)
左:直巻電動機の回路図 下:模式図
![](dcmm-choku.png)
界磁は鉄心にコイルを巻いたもので、電気を流すと磁界を発生させます。
簡単に言えば、弱め界磁というものは、
界磁に入る電気だけを弱めることで、
電機子の電気はそのままでも回転数を上げることが出来ます。
下のモデル図を見てください。
![](yowame.png)
回路の下段、MF1〜MF4と書かれているもの。
これが、モーターの界磁コイルです。
その隣、丸の中にAと書いてある記号(M1〜M4)が電機子です。
さらに上段、界磁コイルと並列に接続してある回路は、分流抵抗と呼ばれる回路です。
先頭に誘導コイルがあって、次に抵抗が並んでいます。
誘導コイルを説明するとめんどくさいので、ここでは無視していいです。
そして、抵抗を短絡させるスイッチ。
これが、弱め界磁制御の回路です。
では、動かしてみましょう。
駆動電力と逆起電力がつりあってこれ以上回転数が上がらない。
てことで、分流回路のF1Sを入れます。
回路が二つに分かれたことで、、界磁に流れていた一部の電流が、分流抵抗回路を流れ出します。
すると、界磁に流れる電流が少しだけ少なくなるので、界磁の力が弱くなります。
つまり、磁力が小さくなるのです。
界磁が弱くなると、逆起電力を発生させる力が弱くなりますね?
(力と磁界で発生させる起電力のうち、磁界が弱くなるので)
しかし、電機子に流れていく電気はそのまま(見た目は大きくなる)なので、
界磁が弱くなって逆起電力が減少した分、回転数が上がります。
なんだか不思議な現象に見えますが、
「電気」と「磁界」で発生させる「力」のうち、
磁界が弱まった分逆起電力が減少して、電流が大きくなるのです。
つまり、「逆起電力を減少させて駆動電流を流れやすくする」のです。
ここが、弱め界磁制御の大きなポイントです。
しかしながら、回転数が上がるとまた逆起電力と駆動電流がつりあってしまいます。
ということで、
スイッチは他にも残っていますので、加速させるためにガンガン短絡しましょう。
F2S、F3S、F4Sを短絡させていけば、分流抵抗回路の抵抗が小さくなるので、
そこを流れる電流が大きくなり、逆に界磁を流れる電流は少なくなります。
こうすることで、逆起電力が減少して、回転数を上げることが出来るのです。
なお、界磁に流す電流をゼロにすることはありません。
だって、界磁電流をゼロにしたら、モーター回転しなくなりますから。
分流抵抗回路にも、誘導コイルと分流抵抗が残っているので、
少なからず界磁にもきちんと電流は通るのです。
界磁を弱くする制御方式だから、「弱め界磁制御」なのです。
これ、意外と難しいので、理解するのも大変だと思います。
抵抗制御電車は、これを高速域で使用しています。
なお、国鉄末期に開発され、一時期ブームになった「界磁添加励磁制御」も、
この「弱め界磁制御」の応用です。
これは、次の次に。
さて、次はいよいよ実際の直流電車の制御。
抵抗、直並列、弱め界磁を組み合わせた回路の登場です。