メンテナンスフリー

※車両基地のお話より編集して再録


よく最新型の電車は

「メンテナンスフリーをはかった」

なんて言われますが、

メンテナンスがフリーになることなんてまずありません。

メンテナンスフリーだったら、

検査なんかいらんし、

だいたい車両検修の人間なんぞいらんわいなぁ。

というわけで、

我々車両検修の人間のメシの食い上げになるんで、

完璧なメンテナンスフリーは勘弁していただきたい次第であります。

さて、

そのメンテナンスフリーなんですが、

あくまで旧来の電車と比較した上でのメンテナンスフリーであるわけです。

正しく言えば、

「メンテナンスライト」?

「ライト・メンテナンス」?

ってな感じ?

例えば、

113系と223系を比べたとしましょう。

台車だけ見ても、

223系の台車(WDT56・WTR240)は、

113系の台車(DT21・TR62)に比べて、

部品の数が全然違います。

ボルスタレス台車であるために分解が非常に簡単です。

M台車なら、台枠、軸受け、輪軸、モータくらいで、

おおまかな部品ほとんど終わりです。

モータもWN継手なので、

非常に単純な接合方法になっています。

三相誘導電動機を使っているので、

モーターもほとんど見る所ありません。

分解してベアリング変えて掃除してグリス塗って組み立てて終わりみたいな。

そういった、検修的な部分のメンテナンスフリーはかなりあります。

ところが、だ。

制御器がVVVFになった。

つまり、

制御機器の電子化による今までにない故障が多発して来ました。

よって、

そっちのメンテナンスが大変な状況にあります。

それ考えたら、

差し引きあんまりプラスにはなってないのかも。

電車という苛酷な環境下で使われていますから、

けっこう電子機器には負担になっているのでしょう。

なにせ、

電車に電子機器が本格的に活用され始めて、ようやく20年です。

VVVFともなれば、まだ10年ちょっと。

まだまだデータが揃っていないという部分はあります。

これからの積み重ねが大切ですね。