検修はなぜ必要か?


自動車は、法律で「何年ごとに車検を行いなさい」と決められています。

同じように、

鉄道車両においても「一定の期間で定められた検査を行うこと」になっています。

では、なぜ自動車や鉄道車両は検査を行う必要性があるのでしょうか?

自動車や鉄道車両を問わず、

「もの」は使っているうちに必ず劣化していきます。

こんなことをいうと語弊があるかもしれませんが、

この世に存在するありとあらゆる「もの」は、

完成したその時から「劣化」が始まっているといっても過言ではありません。

でも、それははっきり言って「宿命」付けられているものです。

たとえば自動車で言えば、

走るたびにエンジンの中で燃焼が起き、エンジンに負担をかけています。

エンジンで発生した動力をタイヤへ伝えるために、

ギアやドライブシャフトに力が加わっています。

そのエンジンやギアの負担を出来る限り軽くして磨耗を減らすために、

オイルやグリスが入っていますが、

その負担のためにそれらオイルやグリスも劣化していきます。

特に、走るために必要なタイヤは、走れば走るほど削れていきます。

ブレーキをすればするほど、パッドも削れていきます。

多くのところに負担をかけているために、そのまま走り続ければいつか「故障」が発生します。

タイヤやパッドはなくなってしまいます。

日本の技術力がどんなに高くても、動かすためには負担がかかるため

必ず劣化が発生します。

そのために、定期的に検査をして手を入れてやらなければならないのです。

負担のかかる場所に異常なキズや亀裂がないかとか、壊れてるところはないか、

エンジンやギアのオイルを換えてあげたり、グリスを塗り直したり、

磨耗したタイヤやパッドを新しいものにするのです。

かと言って、走らなかったら劣化しないわけではありません。

走らないとエンジンやギアのオイルは剥がれてしまい、

最終的には固まってしまいます。

同じ状態で止まっていると言うことは、タイヤやベアリングの同じところにずっと負担がかかって、

その部分だけ劣化してしまいます。

また、自然による劣化が自動的に襲っています。

空気中の水分や塵によって発生する錆や、それらが可動部に入り込んで固まって動かせなくします。

本来は「定期的に動かすこと」を前提に作られているため、

動かさな過ぎてもダメなのです。

同じように鉄道車両も

走れば走るほどに劣化していきます。

高い電圧がかかる部分は、それだけ負担がかかっています。

ほかにも熱や振動などで自然と劣化して、電気的な絶縁が悪くなったりします。

また、モーターや車輪、車軸も動かせば動かすほど劣化します。

お客様が乗れば、客室も汚れたり座席がヘタったりします。

そのために、定期的に検修を行って、

絶縁状態を測定したり、機能に異常がないかを確かめているのです。

たまに「壊れたら直せばいい」という人が居ますが、

安全運行に関わるものは「壊れて」からでは遅すぎるのです。

そのために、予防保全という形で定期的な検査を行っています。

この部品は壊れていなくても定期的に取り替え、というのは、

耐用出来る年数に限りがあるため、壊れる前に取り替えているのです。

でも、その耐用年数に来ていなくても壊れることがあります。

そのために、少しでもその兆候を見つけるために定期的な点検を行っています。

それでも壊れてしまうこともあるのですが……。

「安全な列車運行のため」だけでなく、

劣化するのを少しでも遅くするため、ものを長く使うために、

検修というものは必要なのです。

同じように、自動車だけでなく、建物や橋などの構造物も

定期的な検査が必要なのです。

どんなに技術が発達しようとも「もの」はできた瞬間に劣化が始まるというのは

どうしようもありません。

だから、身の回りのものを大切に使いましょう。