※車両基地のお話より編集して再録
電車は、
電気で動きます。
当たり前です。
でも、電気で動くんです。
なんか禅問答だなぁ……。
皆さんの家にある家庭用電気機器を見てください。
コンセントからとり入れられる、交流100Vの電気で動いていますね。
でも、内部の機器がすべて交流100Vで動いているのでしょうか?
ものによってはそうかも知れませんが、
マイコン制御全盛のこの時代。
「違う」と言って間違いないでしょう。
マイコンは、かなり微弱な電流で動いていますから。
それと同じ事が、電車でも言えます。
JRの直流電車は、パンタグラフから直流1500Vを取りいれています。
モーターは直流1500Vの電気で動きますが、
制御器は直流1500Vで動くわけではありません。
また、車内の蛍光灯も直流1500Vで点くわけではありません。
電球を15個直列につなげば100Vですが、
あんまり現実的じゃねえよなぁ…。
だいたい、1個壊れたらみんな消えます。
ちなみに大昔、
600Vの電車は電球を6個直列につないでいたらしいですが。
さらにちなみに、113系とかの古いタイプの電車の暖房装置(ヒーター)は、
電熱器を直列につなげて1500V流してます。
よってどっか断線したらヒーター効かない。
今は空調装置使ってるのが多いですが。
さて、
基本的に電車は直流1500Vを取りこんでいます。
交流区間は交流20000Vですが。
新幹線は交流25000Vですが。
今回は直流電車を中心に書きます。
交流電車は、
変圧器を通すから機構的にはあんまり変わりません。
交流がそのまま取り出せるくらいです。
で、
パンタグラフで直流1500Vを取りこんだ電車は、
それをさまざまな場所に使います。
モーターを動かすためだけではありません。
最初に、主回路(メイン)と高圧補助回路(ブス)と言う所に分かれます。
主回路は直流1500Vをそのままモーター駆動のために使いますが、
高圧補助回路はいろいろな所へ使います。
今回は電源の話なので、
電源系統のお話をしましょう。
まず、
主にクーラーを駆動させるための電源を作ります。
この電源は、直流1500Vの次にえらい電源です。
三相交流の440V、
これをMG、電動発電機で作ります。
電動発電機とは、
直流1500Vで動くモーターの軸に
交流440Vを出力する発電機を取りつけたものです。
113系のM´車(モハ112)で
いつも「ひゅぅいぃ〜んっ」と唸っているのがMGです。
これで三相交流440Vが発電されます。
最近の電車なら、
SIV、静止型電源装置で出力されます。
こいつは単なるインバーター装置です。
MGの様にやかましくなく、
音も半導体が微振動する「ぷーん」って音ですが、
パンタグラフ離線時に、
瞬時停電しやすい嫌いがあります。
223系はこれが問題になって対策を施しました。
コンデンサの容量を増やして、瞬時停電を起こりにくくしています。
(パンタグラフ離線時に、コンデンサの中に貯めてある電気でまかなう)
で、三相交流440Vは使い道があまりないので、
今度はもっと使い道のある電源に落します。
あ、117系以降は蛍光灯も440V系統から取っているそうです。
んで、
交流100V、
我々が一番身近にある家庭用電源と同じものです。
これは、普通に変圧器を通せば出てきます。
こいつで蛍光灯とか、扇風機とか、行先表示とか、
前照灯とかを点けます。
で、こいつを整流して、
直流100Vを出します。
こいつがいちばん大事です。
この電源で、制御器が動きます。
他にも放送装置とかATSとか。
新幹線の制御電源も直流100Vです。
この4種類が
電車で使われている電源です。
ちなみに、
直流100Vはバッテリーからも取れます。
知らない人もいると思いますが、
電車はバッテリーを積んでます。
これがないと電車が動きません。
バッテリー残量0でパンタを上げても、
何も動いてくれません。
なにせ、制御器とかは全て直流100Vで動くのですから。
MGの起動回路も直流100Vを使います。
つまり、電源が直流100Vを出力してくれるまで、
バッテリー電源でまかなうのです。
バッテリーを使うのは30秒もありませんが、
残量0では動けません。
ちなみにこのバッテリー。
車と同じ12Vバッテリーを直列につないで100Vを出力しています。
根性の世界です。
通常はパンタを上げれば充電してくれるので、
バッテリー切れになることはないのですが、
うっかり、
乗務員や検査した人がバッテリーを切り忘れると、
悲惨なことになります。
隣の電車から充電してもらいます。
そのへん、
車と一緒です。