駅からちょっと離れた線路沿いに住んでいる方、
もしくはそういう所をよく歩く方。
電車が通るたびに何か妙な音がしていませんか?
103系とか113系のような抵抗制御の電車によく乗られる方、
電車が惰行運転に入った時に妙な音を聞きませんか?
今回はその音のお話です。
で、その音なんですけど、
「パコン!」というか「ポコン!」というか「スコン!」というか、
この3種類が混ざったような音です。
聞いたことありませんか?
……ありませんか、そうですか……。
抵抗制御の電車はそういう音がするんです。
音がする時はどういうときか?
ちょっと考えてみてください。
駅からちょっと離れた所。
電車が惰行運転をする時。
わかりましたか?
そう、
運転士がマスコンをノッチオフした時に出る音なのです。
では、なんでそんな音が出るんでしょうか?
まずは、下の図を見てください。
Lの番号ははっきり言ってテキトーです、わかる人。
まず、パンタグラフからとり入れられた電気(直流1500V)は、
主回路と高圧補助回路と言う所に分かれます。
ちなみにパンタグラフから右側に分岐している「Arr」とは、
避雷器(アレスター)で、普段は電気は通っていません。
主回路に入ってきた電気は、
MS(MDS)という安全スイッチ(みたいなもの、説明すると長くなるので省略)を通って、
「L」と書かれたシャ断器群に入ってきます。
この図で説明すると、シャ断器にはL1、HBL、L2の3つがあって、
L1とL2が常時シャ断器。
HBLが高速度シャ断器(ハイスピードブレーカー、ハイビーともいう)です。
HBLは非常時に電気を緊急的にシャ断する(切る)もので、
普段は入りっぱなしです。
運転士がノッチを入れて加速している時(力行中)は、
もちろんL1もL2も入っています。
さて、運転士がノッチオフします。
すると、制御回路(これも説明すると本が1冊出来るので省略)から指令が来て、
まずL2を切ります。
このとき、回路にはもちろん直流1500Vが流れていますから、
スイッチを切る時は火花を散らします。
ですが、図を見ればわかるとおり、
L2の上に抵抗器が入っています。
これは、減流抵抗器と呼ばれるものです。
電気をいきなり切ると、スパークして急激に高い電流が流れようとします。
この時に流れる電流を「サージ」と言います。
これを食い止める為の「サージ吸収」用の抵抗器です。
L2を切られて通り道がなくなった電気はこの抵抗器の中を通り始めるので、
電流は下がります(E=IR(電圧=電流×抵抗)で適当に数値をあてはめて計算してみてね)。
そして、L2が切れて寸秒した時に、
L1が切れます。
この時に「パコン!」と大きな音がするのです。
つまりこの音、
電気を切ったときの音なのです。
コンセントとかを外す時に、
時々「パチッ!」とか言って火花を散らしますよね?
アレが大きくなったものです。
つまり、電圧が高い上に直流なので、
盛大な音を立てるのです。
L2とL1の切れる間隔はホントにわずかしかないので、
実際、起動試験(実際にブレーキを書けたまま力行する)をやってるのを見ると、
ノッチを切った途端に「パッパコン!」と言う感じで
2段階のように音がします。
「パッ」の所でL2が切れて、
「パコン!」でL1が切れます。
ちなみに言うと、火花の光も出ます。
後藤はこの起動試験が好きでした。
この音を聞いてみたいと言う方は、
抵抗制御電車がよく通るような線で、駅からちょっと離れた線路沿い。
もしくは、実際に乗ってみてください。
103系とか113系だと、パンタのある車両(確か)。
そこに乗って、発車して耳を済ましていると、加速を止めたときに音がするはずです。
いちばんわかりやすいのは地下鉄とかです。
音が反響するのでよく聞こえます。
機会があったら、聞いてみてください。
103系、113系だけじゃなくて、
105系、115系、117系とかのJR民鉄問わず抵抗制御電車で聞けます。
後藤は西鉄のそばに住んでいたのでよく聞こえます。
このお話を書くために、
約半年振りに在来線の資料を読み返しました…。
うーん、覚えてるもんだなぁ…。